前回、ミルトン・モデルの概要をざっと眺めましたが、NLP の世界ではミルトン・モデルより先にコミュニケーションのプロセスをモデル化されたものがあります。それは、最初の研究対象だったセラピストの二人、フリッツ・パールズ、ヴァージニア・サティアのクライエントとのコミュニケーションの中で決まった形の質問をしていたことから分析されて生まれたもの、でもあるのです。
メタ・モデルとは実際にどんなものなのか
人がコミュニケーションをする際、言語の一般化・歪曲・省略による情報の欠落が発生するのは、以前の記事でご説明したかと思います。
メタ・モデルには下記のように12のパターンが存在するのですが、大別するならば一般化・歪曲・省略のどれかに分類されます。
一般化
- 可能性の叙法助動詞:(例文)〜できない
- 必要性の叙法助動詞:(例文)〜べきである/〜べきでない
- 普遍的数量詞:(例文)全て/常に〜
歪曲
- 等価の複合観念:(例文)XとYは同じです(XとYは同列に並ぶの?)
- 前提:(例文)平日と週末ならどちらが良いですか。(どちらから必ず選ばないといけないの?)
- 因果:(例文)XだからYです(本当にXとYに因果関係があるの?)
- 憶測(読心術):(例文)皆が私のことを嫌います。(嫌いって皆から聞いたの?)
省略
- 不特定名詞:(例文)彼が怪我をした。(どこを?)
- 不特定動詞:(例文)明日までにこれをやって来なさい(何を?)
- 比較:(例文)最高の提案をした(全てと比較した結果なの?)
- 判断:(例文)明らかに理想のサービスです(明らかな理由は?)
- 名詞化:(例文)教育/尊敬/過程
メタ・モデルを実際に使うならば
実際に使うとしたら、このような点に気をつけるべきでしょう。
- メタ・モデルは「話を聞く」ためのツールとして使いましょう。もしくは、内面で起こることを聞く時の聴診器と思いましょうか。 誰かがコメントするということは、そのコメントを何か大声で言うこと自体が氷河の一角に過ぎず、水面下に、多くの思慮、信条、感覚、評価などが隠れている、ように振舞うのです。
- メタ・モデルを使うことが正しいシチュエーションであり、相手との関係であるかどうか判断しましょう。もし使うならば、使うことを許容してもらいましょう。
- 使う時には相手とラポートを築きましょう。相手は、問題を発見することにそれ自身の価値を見出すことになります。
- 相手が多く使うメタ・モデルの分類を見つけましょう。
- そうしたら、相手が言葉にしたことの裏側で考えたことを見つけ出せるように手助けする緩い質問をいくつかしてみましょう。
- あなたの目指すものが、相手が考えたことが「間違っている」ということを認めさせること「ではないこと」を明確にしましょう。あなたが目指すものは、むしろ、考えたことを考えてもらうこと、なのです。
一般的に、質問を最初にすることは避けましょう。むしろ、心の中で相手が使っているメタ・モデルのパターンを書き留める間は静かに話を聞きましょう。もっとも多く使うパターンを認識することを目指しましょう。まさにそこに最初の手がかりがあるのですから。
ミルトン・モデルとの違いは?
ミルトン・モデルは、メタ・モデルがフリッツ・パールズ、ヴァージニア・サティアのクライエントとのコミュニケーションから生まれたものに対して、その名の通りミルトン・エリクソンの催眠療法のプロセスで使っていた言葉遣いから生まれたもの、ですが、メタ・モデルが曖昧なコミュニケーションにより欠落した情報をいかに拾い出していくか、というプロセスであるのに対して、ミルトン・モデルは
コミュニケーションを取る際にあえて「曖昧な表現」を使うことが言葉の受け手において受け手の解釈によって補完され、その補完のプロセスにより(催眠なり販売意欲なりを)誘導し補強している
ということ(って、実はミルトン・モデルがなぜ有効に機能するのかを一言で言うとこうなるって、わかりましたか?)から、実はこのミルトン・モデルは、逆メタ・モデルと呼ばれているくらい、言葉の曖昧さという起点を同じくするにも関わらず、方向性が真逆を向いているのです。